AI面接で表情は採点されているのか|HireVueは2021年にやめている
AI面接の対策記事を読むと、たいてい「表情・声のトーン・視線が採点される」と書いてあります。それを信じて、笑顔やカメラ目線の練習に時間を使う人がいます。しかしこの説明は、いまは正確ではありません。何が起きたのかを順に見ます。
業界最大手は、2021年に表情の採点をやめた
録画型AI面接の代表格であるHireVueは、2021年1月に、表情の解析を評価から外しました。第三者による監査を受けたうえでの判断です。監査を行ったのは、アルゴリズム監査を専門とする ORCAA という会社です。
きっかけは、その前年に米国のプライバシー団体が連邦取引委員会へ申立てを行ったことでした。表情から認知能力や性格を測れるという主張には裏づけが無く、偏りを生むという内容です。
批判の中心は、公平性でした。表情の出方が定型的でない人。自閉スペクトラム症の人、顔にまひや傷のある人。こうした人が、話した中身と関係なく低く評価されるという指摘です。
ただし、この発表は新しい評価についてのもので、既にある評価の仕組みには当面残っていたという指摘もあります。「一夜で完全に消えた」と単純化するのは正確ではありません。
欧州は、職場での感情の推定そのものを禁じた
欧州連合のAI法は、2025年2月2日から、職場と教育機関において、生体データから人の感情を推定するAIの利用を禁じています。医療や安全のための利用だけが例外です。
禁じられているのは、顔・声・歩き方・生理反応といった生体データから「感情」を読み取ることです。違反すると、最大で3,500万ユーロ、または全世界売上高の7パーセントという水準の制裁が定められています。
ここには重要な線引きがあります。禁じられているのは感情の推定であって、見れば分かる状態の検出まで禁じられているわけではありません。「口角が上がっている」と記録するだけなら該当せず、「だから喜んでいる」と結論づけると該当します。
なお、これは欧州の法律です。日本国内だけで採用を行う企業を直接縛るものではありません。国際的な方向がそちらへ動いている、という位置づけで読んでください。
日本では、どう扱われているか
日本には、AI面接そのものを規制する法律はありません。表情を評価に使うこと自体を禁じる条文も無いのが現状です。
ただし、顔から取り出した特徴量は、個人情報保護法の「個人識別符号」にあたります。つまり個人情報です。取得する目的を示し、本人の同意を得たうえで扱う必要があり、第三者へ渡す場合も原則として同意が要ります。
採用選考で応募者の個人情報をどう扱うかについては、職業安定法とその指針にも定めがあります。企業の側は、目的を示さずに集めてよいわけではありません。
受験者の立場から言えば、案内や同意書に「何を取得し、何に使うか」が書かれているはずです。そこを読めば、その企業が何を見ているかはある程度分かります。
では、受験者は何をすればよいのか
どの企業がどこまで見ているかを、受験者が外から確かめる方法はありません。だからこそ、確かめられないものに時間を使わないという判断が要ります。
表情の作り込みは、練習しても効果が測れません。しかも本番で意識しすぎると、話す中身のほうが疎かになります。時間の使い先としては割に合いません。
映像について必要なのは、次の三つだけです。これ以上を作り込む必要はありません。
- カメラに正対して座る(見上げる角度・見下ろす角度にしない)
- 顔に正面から光が当たる位置に座る(窓を背にしない)
- 聞き取れる声で話す。マイクは口元に近いものを使う
実際に採点されているのは、中身と話し方
表情の議論が目立つせいで見落とされがちですが、AI面接で見られている中心は、答えの中身です。結論から述べているか、数字と固有名詞があるか、自分が何をしたかが分かるか、掘られても中身が続くか、話が食い違わないか。
話し方の側では、言い淀みの多さ、話す速さ、長い沈黙が材料になります。日本語なら1分あたり300字から400字くらいが聞き取りやすい速さです。
こちらは練習すれば確実に変わりますし、変わったかどうかを自分で測れます。表情に使う時間を、こちらへ回してください。
まとめ
この記事の要点だけを並べます。
- 「表情で採点される」という説明は、いまは正確ではない
- 業界最大手は2021年に表情の採点を外した。理由は公平性への批判
- 欧州は2025年2月から、職場での感情推定そのものを禁じている
- 日本にAI面接を直接規制する法律は無いが、顔の特徴量は個人情報として扱われる
- どの企業が何を見ているかは、案内と同意書を読めばある程度分かる
- 表情の作り込みではなく、中身と話し方に時間を使う